自発的行動の支援につながるコミュニケーションスキル:聴く
ビジネスの現場でも『聴く』に注目が集まっています。ですがなかなか実践できている人が少ないのも事実です。単純に『聴く』方法がわからない、ということもありますが、『聴く』ことでもたらせることを理解できず、取り組んでいない、という方が大半かと感じます。今回はコミュニケーションには必須と言われている『聴く』についてお伝えします。
Contents
「傾聴」(聴く)とは?
コーチングとは、会話を通して相手に必要な気づきを与え、行動へと導く手法です。最近では、社内の人材育成のために取り入れる企業が多くなってきました。そこで本記事では、コーチングの基本スキル「傾聴」(聴く)について解説します。組織や部下の育成に役立ててください。
一般的に使われている「聞く」と「聴く」は、何が違うのでしょうか。
「聞く」は、音が自然に耳に入ってくるような場面で使われます。一方、「聴く」はさらに注意深く”きく”こと。実は、この2つの意味はまったく異なります。「聴く」は、漢字の中にあるように「耳」「目」「心」を傾けて真摯に聴くことがポイントです。相手の言葉を理解するだけでなく、相手の表情やしぐさまで注意をはらい、気持ちに寄り添いながら聴くことが大切になってきます。傾聴力は、社会生活において必須のスキルとも言えるでしょう。
何を聴けばいい?
では、具体的に何を聴けば良いのか解説していきます。
相手の言葉
相手の言葉の中にあるメッセージに「耳」を傾けます。「耳」を傾けるのは、相手の話を遮ったり否定したりせず、まずは受け止めるということ。相手が考えていたり言葉に詰まって沈黙してしまったりした場合でも、できる限り話しはじめるまで待つ姿勢でいることが大切です。部下とのコミュニケーションにおいては、話を遮らず「耳」を傾けることで、自分の話をのびのびとできるようになるでしょう。
相手の表情やしぐさ
相手の表情やしぐさに「目」を傾けます。
- 落ち着き
- 不安
- 怒り
- 興奮
会話の中では言葉だけでなく、相手の表情やしぐさから読み取れるものは多いですよね。話し手がうまく言葉にできない場合でも、表情やしぐさに注意し、寄り添うことが大切です。
聴き手の表情やしぐさも非常に重要です。
- 腕組みをしない
- 時計やスマホを見ない
- 視線をあちこちにそらさない
聴き手の態度で「あの上司は相談しづらい人」と認識されてしまわないよう、注意が必要です。自然に相手の方へ体を傾け、柔らかい表情で聴くことを意識しましょう。
相手の感情
相手の感情に「心」を傾けます。「心」で聴くことで、相手が本当に伝えたいことを汲み取ることができます。例えば、部下は上司に本音を言えないことも多いでしょう。
- 本当は何を伝えたいのだろう
- どんなことで悩んでいるのだろう
相手の立場になって聴き、会話の真意を知りましょう。どんな気持ちで、どんな不安があって話しているのか、感情の奥底から理解することが大切です。相手の話を真摯に受け止め、理解を示し、言葉の背景にある感情を汲み取ります。
聴くときのポイント
聴くときは、どのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。抑えたいポイントをお伝えします。
相手の目を見る
相手の目を見て聴くことで、「自分の話を真摯に受け止めてくれている」と感じ取ることができます。しっかり聴いてもらえていると思うと、次の言葉が出てきやすくなりますよね。ただし、目をじっと見つめるのではなく、相手の眉間を見るなど適度なアイコンタクトにしましょう。
あいづちを打つ
傾聴では、まず相手の話を受け止めることが大切です。
「うん、うん、」
「へ〜」
「なるほど」
「そうなんですね」
相手の話をじっと聴くだけでなく、適度にあいづちを打ち、受け止めましょう。相手は、「自分を受け止めてくれた」と感じると自己肯定感が上がり、あなたへの信頼にもつながっていきます。ここでのポイントは、相手の話に先入観を持たずに「真摯に聴く」こと。聞き手の話を否定したり、自分の意見を言って話を遮ったりしないことが大切です。
話した内容を繰り返す(リフレイン)
相手の話した言葉に対し、聞き手はそれをそのまま繰り返します。
- 「心配です。」→「心配なのですね。」
- 「〜と思いました。」→「〜と思ったのですね。」
- 「〜が好きです。」→「〜が好きなのですね。」
相手の話を繰り返すと、「理解してもらえた」「共感してもらえた」と安心感を与えることができます。はじめは自分の意見や方向性がまとまっておらず、相手本人も整理できていないことがあります。聴き手が内容を繰り返すことで、自己理解や新たな気づきを与えることができるでしょう。このときに、聴き手は落ち着いたトーンで話すと、より高い効果が生まれます。
沈黙する
会話中に、相手が言葉につまってしまって沈黙することもあるでしょう。その場合は焦らず、相手が話し始めるのを待ちましょう。考えている場合や混乱している場合もあるので、無理に話を変えたり聴き手の意見を言ったりしないことが大切です。途中で意見せず、最後までしっかり聴いてみましょう。沈黙が長い場合は、上でお伝えした「内容を繰り返す」を行うのがポイント。「こう理解したけど合っているかな?」と自分が理解したことを伝えてみましょう。部下も理解してもらえたと安心し、相互理解につながります。
深く聴くことでどうなる?メリットを解説!
ここでは、傾聴するメリットを解説します。ぜひ実践してみましょう。
問題解決能力が向上する
1人で考えていても問題が解決しない場合が多く、誰かと話している間に答えが見つかることも多いのではないでしょうか?聴くことは、聴き手がアドバイスをして問題を解決するものではありません。聴き手が寄り添い、導くことで話し手が自分自身で整理していくもの。人から指示されるよりも自身で考え、答えを導き出すことができれば、相手自身の問題解決能力の向上へとつながるでしょう。
潜在能力が発揮される
聴くは、1人で気づけなかった新しい考え方や能力を引き出すことができ、自身に対する理解も深まります。聴くことから、自分の持っている能力に気づき、それが積極的な行動にもつながるでしょう。
モチベーションの維持ができる
聴くことにより、理解した方もされた方も自己肯定感が高まり、モチベーションの維持に繋がります。「自分を理解してくれるあの人となら仕事がしたい」という気持ちは、モチベーション維持にとても大切なことです。
信頼関係を構築しやすくなる
相談をしても毎回否定されたら「もうこの人には話したくない」といった気持ちになりますよね。聴くことは理解を示し共感するので、「またこの人に話をしてみよう」という気持ちにさせます。回数を重ねていくうちに同僚や部下、上司との信頼関係は構築しやすくなるはず。信頼関係があると、部下から上司への困りごとや悪い報告もしやすくなり、業務が円滑に進むでしょう。
まとめ
今回は、コーチングの基本スキルである「傾聴」(聴く)について解説しました。聴くは、相手の話に真摯に耳を傾け、寄り添うことが大切です。その結果、相手の自発的な行動を支援することができ、相手自身が納得する結論へと導かれるでしょう。部下とのコミュニケーションや育成に悩んでいる場合は、ぜひコーチングを取り入れてみてはいかがでしょうか。
編集後記
発行者
下田まゆみ
Coaching Office ENTRESH 代表
(下田まゆみの公式プロフィールはこちらです)
ICF(国際コーチング連盟)認定PCC(Professional Certified Coach)
GCS認定プロフェッショナルコーチ
GCS認定講師(青山渋谷校講師)
プレゼント
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